だめぽ

以前紹介した電子メールで招集、「無意味な群衆」プロジェクトと、2ちゃんねるの「大規模off(ネタオフ) (仮)@2ch掲示板」の違いってのは日本人とアメリカ人の本質的な違いではないだろうか。たとえば2ちゃんねるslashdot(本家)の違いとか、ウェブログとWEB日記の違いとかに共通する。それは、「かっこつけ、キザ」と「ダメ人間」の違いのような。
日本はアメリカの十年後をついて行っている、という言葉を聞いたのは今は昔、でも孫正義が「タイムマシン経営」で儲けたように、実際に時差があり日本はアメリカに今でも追いつけ追い越せの部分が多分にある。インターネットではその傾向は顕著だ。アメリカは最先端だが、日本では二番煎じだ。新しいものはアメリカからやってくる。世界を変えていくのはいつもアメリカだ。インターネットの世界では新しいものほど価値がある。
この絶対的な落差の中で、傷つかずに生きていく方法は何だろう。そうやって現実を逃避するように生まれたのが「ダメ指向」ではないか?
ちょうどインターネットが発達した時期、日本の経済はバブルが崩壊しどん底に向かう途中だった。アメリカはITバブルで絶好調になり、けれどもバブル崩壊を経験した日本はがむしゃらに働くことを諦めていた。日本に蔓延していたのは、バブルの後遺症である「働かなくても生きていける」という感覚と、「働くことがいい事じゃない」という感覚と、「働いてもどうせだめぽ」という感覚である。
またそのころ、日本では常時接続など夢のまた夢で、ネットを本格的に利用できる人たちは限られていた。午後11時から朝8時までのテレホタイムを存分に利用できる人たち、昼間の生活を寝不足で過ごしてもそれほど支障を来さない人たち、つまりダメ人間たちである。
ダメ人間は昼間のやる気文化からは迫害を受けているので、なおさらネット世界に逃げ込む。国全体がダメな雰囲気なので、そこでの奇妙な集まりは奇異ではあるが救いがないようには思われない。むしろ海の向こう最先端のアメリカではインターネットを利用して革命が行われているらしい。使えたら楽だよ。ダメな国の中でもより濃いダメの集合として現実逃避的ダメ世界が生まれ、ダメな国の人たち全体が「楽だから」というダメ人間的理由によりなだれ込んでいく。海の向こうでは儲かっているらしいから、というこれまたダメな理由で投資する人が後を絶たない。こうして経済的にも裕福なダメ空間が誕生する。裕福な資金を手元に残している人は少ないかもしれないが、無料あるいは低価格で豊富な技術を利用できるというのはネット世界全体に投資が行われネット世界全体が裕福になった結果である。経済的に非常に安価に利用できると言うことは、つまりダメ人間がいつまでもそこにとどまれるということでもある。
こうやって成り立った日本のインターネットが、ダメ以外の物であるはずがない。
ダメとは競争を棄てることである。最先端でなくてもいい、価値が無くてもいい、世界を変えられなくてもいい。どうせおいらはダメ人間。でも、楽で楽しいよ(  ̄ー ̄) 競争を棄てた余裕による人間性の回復。競争社会の中で、競争を棄てたという幻想によって傷をなめあうダメな人々。でも楽しいの。だってみんなダメだから。
アメリカでは大抵「俺ってCOOL、最先端ってCOOL」と思ってネットを活用している。日本では大勢が「みんなだめぽ」と思いながらやっている。