綿矢りさ 蹴りたい背中

話題の芥川賞受賞作(前回のなー)。もうね、萌えですよ萌え。まあ特に秘密のある小説でもないんだけど以下ネタバレでなんで、注意です。(というか本を読まずにこの感想を読んで信じる人がいたらまずいなー)


これはクラスでのけ者にされている寂しがり屋の女の子(読む際には綿谷氏本人を投影*1)が同じくクラスでのけ者にされている同級生のアイコラ職人(読む際には根暗で冴えない高校時代を送っていた男性読者本人を投影)に、なんとも言い難い衝動を抱く物語なのです。この衝動はおそらく自分自身に対する「蹴りたい」衝動なのですが、それを恋と勘違いしてしまう友達に惑わされて、「ああ、これって恋かも」と主人公本人も勘違いしてしまいます。そして最後は朝焼けを二人で見ながら彼氏が遠くのアイドルよりも近くの彼女を見つめたりなんかしてもうラブラブですよ。
そしてもう一つ特筆すべきは、全体に漂う甘酸っぱい青春の空気です。

さびしさは鳴る。耳が痛くなるほど高く澄んだ鈴の音で鳴り響いて、胸を締めつけるから、せめて周りには聞こえないように、私はプリントを指で千切る。細長く、細長く。紙を裂く耳障りな音は、孤独の音を消してくれる。気怠げに見せてくれたりもするしね。葉緑体? オオカナダモ? ハッ。っていうこのスタンス。 あなたたちは微生物をみてはしゃいでいるみたいですけど(苦笑)、私はちょっと遠慮しておく、だってもう高校生だし。ま、あなたたちを横目で見ながらプリントでも千切ってますよ。気怠く。っていうこのスタンス。

もうね。背筋がむずがゆくなりませんか? でもよくできている。恥ずかしいだけで決して下手ではない。正直むずがゆさが、だんだんと快感となります。
もうさいごは「りさたん僕の背中も蹴ってよ(*´Д`)ハァハァ」みたいな感じで。

*1:画像はこのへん http://d.hatena.ne.jp/munekata/20040115#p1 から一番写りのいいものを選んでね