華氏911

見てきたよ。うーん、思ってたより面白くなかった。「ボウリング・フォー・コロンバイン」の方が面白いです。
要約すると、ブッシュおよび民主党は胡散臭い、戦争の犠牲になってるのはアラブ人ではなくてアメリカの貧困層だ、という主張、かな?


印象的だったのはラスト、自分の息子が湾岸戦争で死んだ母親がホワイトハウスを訪れるシーン。日本でもいる”危ない人”が、ホワイトハウスの前にテントを張って「ブッシュは金のために戦争してるんだ、イラクでは罪のない子供たちが殺されている」と叫び続けている。その前にその母親がたって「そう、私の息子も死んだの」と泣きながら同意する、すると道行く”善意の人”が「この人の言うことのはマスコミ向けの芝居なのよ、あまり関わらない方がいいわ」と忠告してあげるんだけど母親は「なにをいうの、私の息子は本当に死んだのよ」と怒る。”善意の人”はその反応に困惑して「大勢死んでるのよ」と言い捨てて去っていく、母親は「みんななんて無知なの」というシーン。
なんというか、どうしようもないな、という感じ。世界を俯瞰してみることができるという錯覚を与えるテレビや映画、インターネット、けれどもその情報は発信も媒介も受信も、個人の感情と価値観と意図とそういったフィルターに覆い隠されていて、それを突き破る別の「個人の体験」はけれども「他人の体験」でしかない。真実はどこにあるのか、とかそう言うこと。
この映画自体も「危ない人マイケル・ムーア」のプロパガンダでしかなく、おそらくブッシュ萌えな人々(小泉首相とか)は「ムーアは歓心が欲しいだけなの」と言うんだろう。そしてそれも一面の真実だ。ムーアが編集した個々の事実はムーアの見た真実という以上の保証を持たないからだ。あとは彼(あるいは彼を評価する他の誰か)にどれだけの信頼を置くかの問題でしかなく、彼を嘘つきだと断じる人にはそれだけの価値しか持たない。


あとこれは「反戦映画」と取れるように見えるけど実際は「ブッシュのやってる戦争はおかしいですよ」止まりでブッシュの対立候補であるケリーはあんまり戦争反対じゃないんですよね。映画の中でもアラブ人に対する偏見はみえみえ。だってアメリカ人だもん(偏見)。

カンヌ映画祭が主演男優賞にジョージ・W・ブッシュを選んだら良かったのに、と思う。『誰も知らない』の柳楽優弥の演技はしばしば「カメラに撮られているとは思えない自然な演技」というように絶賛されるが、それで言えばワールドトレードセンターへの自爆テロを知らされ、「合衆国が攻撃されています」と口伝えされた後のブッシュの表情は「カメラに撮られているとは思えない」ほどの人間性あふれる魅力的な表情だった。

はてなダイアリー - エロ本編集者の憂鬱と希望

ああ、僕もあのシーンを思い出す都度にブッシュが好きになります。というか全般的にブッシュ好きになるよ。