レディ・キラーズ

第57回カンヌ国際映画祭 審査員賞(マダム) パルムドール賞ノミネート
最近のコーエン兄弟はなんか変だ。なぜか性転換しているウォシャウスキー兄弟よりはふつうにだが。変だ。「ディボース・ショウ」から。なんか切れがない。だからスティーヴ・ブシェーミティム・バートンにとられるんだよ! (←関係ない) いや、聖歌隊に確かにそれよりすごいやつはいたけど、お話には絡んでこないし。(←あのちっちゃくて黒い竹中直人みたいな人、気になる)なんだろう、何か「僕たちには分からない楽しみ」を見つけてしまったのだろうか。たとえば「コーエン兄弟だからとか言って見に来る映画通ぶったやつらにそっぽを向く楽しみ」とかそういうの。あいつらならやりかねない。
そう、コーエン兄弟の魅力はやっぱり、ギャハハではなくクククという笑いだ。笑うのがためらわれるような。バカがダメになっていく様を描く、悪意ある冷たい視線、その語り口の諦めに似た暖かさ、突飛であるが故に醸し出される胡散臭い寓意、寓意の裏にうっすらと聞こえる「んなこたあない」という薄ら笑い、彼らの笑い声。クククが続いていつの間にか大声で笑っている、そんな笑いこそが「コーエン兄弟の映画」と聞いて僕が期待する映画なのだ。
それが、ディボース・ショウからこっち、悪意は薄っぺらなブラックユーモアにしかならず、キャラクターは予想の範囲を超えては転がり落ちず、ストーリーは手堅く語られるだけ。ただのどたばたコメディーになってる。この程度のどたばたならドリフのコントのほうがおもしろいわけで。
この映画を見ればきっとあなたも思うだろう。もっとおもしろくできるのに! コーエン兄弟なら! トム・ハンクスなら! いやトム・ハンクスじゃなくても! 志村でも!
音楽はいい。サントラ欲しいくらい。竹中直人とセットで是非