全部読んだ[評価2/5]

タイトル
日本三文オペラ
著者
開高健

楽しみ方教えてください。後半の方、この本を薦めてくれた人に聞いて、なるべく「情景を目に浮かべながら」読んだら、それなりに楽しめたけど(どうも最近こういう読み方をしていないなあ)。ただ、エピソードとかどうも中途半端な気がする。これを参考にした物語を多く読んでいるからだろうか。
この物語ではアパッチ部落というコミュニティーの発生と衰退が主軸となっている。主たる職を持たない者が集まり、近所の軍事工場跡地に埋まっている廃鉄を集めて回る集団アパッチ族(当然不法侵入の上に窃盗である)。そのコミュニティーではあらゆる人に役割がある。利害関係のみでつながっており人情に縛られず自由に行き来が可能だ。
という理想郷なのだが、実はそういった理想郷は優しさの上に成り立っている。優しさを支えているのは余裕である。彼らの優しさは鉄は掘れば掘るほど出てくるという楽観的で無根拠な未来予想に支えられている。
当然、鉄は掘れば無くなるし、警察も黙っているわけがないし、で、生活は厳しくなりコミュニティーが崩壊するのである。ただ、そういった余裕が無くなった後の殺伐としたエピソードは「ルールを知らない部外者によってなされたこと」として描かれている。
だから物語は哀愁を漂わせることができるのだが、実際は「新参者と古株の資源争い」みたいな形になるのではなかろうか。